「鬼滅の刃」超人気の理由は「文系マンガ」だからである。~品川心療内科ゆうメンタルクリニック秘密コラム
◆ 鬼滅の刃は「文系」のマンガだなと思った話。
こんにちは。ゆうきゆうです。
最近、マンガ「鬼滅の刃」がすごく話題なので、全巻読んでみました。
読まれたことのない方のために説明しますと、こんなストーリーです。
時は大正。
人を食う「鬼」と、それを倒す人間たちである「鬼殺隊」が、 色々な技を駆使して戦いあった。果たして勝つのはどちらか!?
すごいザックリ説明しました。
何にせよ、マンガ自体はとてもとても面白かったのですが、個人的にこのマンガ「文系」だな、と思ったので、そんな話をしたいと思います。
◆ 多彩な技があるが…!?
まず「鬼滅の刃」の主人公は、「鬼殺隊」に所属します。
そして同じく所属する戦士たちは、それぞれ「得意な技系統」を持っています。この技系統を「呼吸」と呼びます。
そしてそれがさらに、「型」という通し番号が振られています。
この時点で少しややこしいのですが、例を見ると分かりやすいです。
たとえば「水」が得意な戦士は
「水の呼吸 1の型 (技名)!」とか
「水の呼吸 10の型 (技名)!」などの必殺技を繰り出します。
他にも「風」が得意な戦士は、
「風の呼吸 2の型 (技名)!」みたいな感じです。
1とか10とかは難しい漢数字なのですが、ここでは簡略化して算用数字にします。
で、みんなそれぞれ色々な技があるわけですが…。
ただ、それぞれが、いまいちどんな技でどんな効果があるのか分かりにくく、「違うのは効果ビジュアルだけでは」と思う技が多々あります。
全体的に、なんか攻撃内容がフンワリした感じというか。
なんかよく分からないけど、強そうな技だー、くらいな。
そういえば以前「聖闘士星矢(セイントせいや)」というマンガがあり、そこでの必殺技も全体的に
「フンワリした感じだけどなんか強そう」
という感じでしたが、少しそれを思い出しました。
そしてマンガ内では、それぞれのキャラが
「今度は7の型!」
「次は8の型!」
と出していくと、敵が
「なにいっ!? そんな技があったとは! ギャー!」
みたいにやられたりします。
これ、いくらでも後出しでイケるんじゃないか。
そんな風に思いました。
◆ 文系マンガと理系マンガ。
逆に対照的なマンガで言いますと、いわゆるジャンプ系では「ジョジョ」や「ハンターハンター」というマンガがあります。
そこでは、戦いの前や途中に
「この人の能力は、明確にこれ」
「この敵の能力は、ハッキリこういう定義」
と判明します。
時によく分からないアバウトなものもあるのですが、基本は明確です。
そしてその出し合った能力同士で戦い、
「えっ!? この能力をこんな風に応用して!?」
「その能力をそう使って逆転するとは!」
みたいに、分かりやすく勝負がつきます。
ある意味、論理がカッチリしてて、バトルの展開が「理系的」な気がします。
そう考えると、鬼滅の刃や聖闘士星矢は、「文系的」なのではないか、と思いました。
まぁ、これはどっちが良いとか悪いとかではなく、もう純粋に方向性の話だと思います。
◆ ドラマそのものも違う…?
くわえて気づいたことして、理系のバトルマンガは、論理を主体としている分、「感動ドラマ」とか「人間ドラマ」の割合が少ない気がします。
たとえばジョジョやハンターハンターも、感動や心動かされるシーンがあるのですが、全体としては比率は少なく、一連のシリーズのラストだけにまとまっている印象があります。(たとえば大ボスを倒した直後など)
逆に文系のバトルマンガは、その分、感動ドラマや人間ドラマの割合が多めに割かれているように感じます。
実際、「鬼滅の刃」では、一回か二回のバトルにつき、必ずといっていいほど情動的な人間ドラマが挟み込まれてきます。
さらにすべてのキャラに「どうしてそうなってしまったか」という歴史やドラマが存在します。
そこには非常に悲惨なもの、涙を誘うものもあり、それによって強烈に話に引き込まれていきます。
逆にジョジョやハンターハンターには、変態的もとい素敵な個性のあるキャラがたくさん存在します。しかし「なぜそうなったか」は、そこまで語られません。
たとえばジョジョには何にでも疑問を差し挟む「ギアッチョ」というキャラが出てきます。
「よく『根掘り葉掘り』って言うよなぁ~! しかし、根っこを掘るのは分かるが葉っぱは掘れないだろう! チクショウ!」
と突然ブチ切れるようなキャラなのですが、もちろん彼がそうなった情緒的な理由は、作中で語られません。有無を言わせず、そういう人間だとして存在しています。
もし、彼が「鬼滅の刃」のキャラだったら、たぶん
「彼は幼いころに、雑草の根っこや葉っぱを食べるほど貧乏であった。しかし嵐によりすべての草木が土に埋もれてしまった。そのため彼は地中から葉っぱを掘り、土にまみれたそれらを食べて生き延びた。それ以来、彼は『根掘り葉掘り』という言葉を聞くたびに、その哀しい記憶を思い出し、突っ込まずにはいられなくなったのだ――」
などのドラマが入ります。必ず入ります。
しかも単行本の空きページでは、「本当は光合成にも恨みを抱いている」みたいな、本編に書き切れなかったウラ設定まで語られます。
何にせよ鬼滅の刃とは、すべてのキャラの哀しいドラマをそこまで掘り下げるマンガで、だからこそこれだけ多くの人の心を打ち、愛されている原因なのではないかと考えました。
いずれにしても、お時間がありましたら、ぜひお読みいただければ幸いです。
ちなみに自分が何を読んでもアレな分析しかできないのは、幼少期のできごととかトラウマとかは一切関係ありません。突如発現した変態能力です。ジョジョに近い。
色々と切ない人間性を感じつつも、ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。
(完)